マークへの手紙

今日天気 雨



マーク*1、君がこの世から旅立ってから11年になろうとしています。
早いものですね。君が旅立つとき、××(息子の名前)は、まだ、結婚前でした。
今では良い親父になっています。先だって長男が生まれました。君に似て可愛い、可愛い赤ちゃんです。××が赤ちゃんを抱っこするときの姿は、君がまだ小さいとき抱っこしたときとおなじです。


君が我が家に来たのは、君がうまれて3ヶ月のときで、××は小学3年生でした。
××が初めて君を抱いた時の喜びようは最高だったような気がします。
君がきてからは、それまでとはすっかり我が家の様子が変わりました。家族は君に付きっ切りになってしまって、それ食事だ、散歩だ、おしっこだと振り回されました。
特に××は君に対してよく世話をしました。そして君は××によくなつきました。
かけっこもしました。キャッチボールの玉拾いもしました。旅行にも行きました。旅行のとき、君をリュックサックに入れてそっと部屋までつれて行きました。部屋に入ってから一回もほえませんでした。そして家族と一緒の布団で寝たときも少しジャレましたが、ほえませんでした。ですから旅館の人にも他のお客さんにも君が部屋にいることはわかりませんでした。このときの旅行は家族の思い出の一ページになりました。


君専用の家を買いました。大きくなったので外で生活をしてもらおうと思ったのです。
××は猛反対をしました。今まで通り我が家で寝起きをしたいというのです。
試しにということで外に出てもらいましたが、君が外からジッと家の中を見ている姿をみると可愛そうになりました。でも、甘やかしては駄目ということで二三日外の君の家にいてもらうことにしましたが、やっぱり君は自分の家の居心地は良くなかったようで、クーン、クーンと鳴き続けました。
こんなこともありました。朝、雨戸を開けたら君の家からサッと一目散に逃げていく犬がいました。あの犬は彼女。それとも男友達でしょうか。君はハンサムだから持てるだろうとは思っていましたが。でも、散歩の途中で異性と会うと実に無関心でした。人間で言うと冷たい感じでした。ですから、君の家にいた犬は男友達だったのかもわかりません。
そんなこともあって、また我が家の中で過ごすことになりました。
君は喜びました。それ以上に喜んだのは××です。


ああ、それから忘れていましたが、我が家で君にとって一番怖い存在だった娘のところにも子供二人生まれています。君がこの世にいたときは男の子一人だったけど、これで子供三人になりました。三人とも男の子です。
三人とも君が好きだった野球をやっています。上の二人は選手になってがんばっています。下の子はまだ小さいので、お兄ちゃんたちの野球を見てピッチャーの真似事をしています。小さいながらもコントロールは抜群で、保育園の人気者です。
我が家の家系は君を含めて男系です。


病院にいっていろいろと治療してもらいましたが、良くなりませんでした。
歩くのもよろよろと覚束ないものでした。それでも必死に大好きな我が家の庭を一周しました。時々、君は後ろを振り返りました。
あの野球の球を追っかけて走る格好良い姿はもうありませんでした。
海岸で水しぶきを上げて、うれしくてたまらないというふうに走った姿はもうありませんでした。
もう、走らなくても、歩かなくてもいいよ。最後の抱っこをしてもらって家の中にはいりました。
その姿を見て××は君と一緒に同じ布団で寝ました。朝、××の看病の甲斐もなく、旅立ちました。
君が我が家に来たとき、我が家の様子は変わりました。君がいなくなってからも我が家の様子は変わりました。今度は君がいなくなった空虚な生活が始まりました。


あれから11年、君が住んでいた家には夫婦二人だけになってしまいました。
祭壇には君の写真が飾ってあります。お彼岸や君の命日には必ずお墓参りに行って、君に会うようにしています。
××にも可愛い男の赤ちゃんが生まれて、君のことを少し忘れてしまうかも分からないけど、許してやってください。


まだ、まだ沢山書きたいのですが、時々、君のことを思い出しながら書きたいと思っていますので、残りを大事に取っておきます。
楽しい思い出を沢山作ってくれて、本当にありがとうね。
マークへ

*1:11年前に我が家で飼っていた犬の名前・14年間一緒に生活しました