ある日の出来事

今日の天気 晴れ

ある早朝のことです。
「おとうさん、お父さん、オトウサン」と家内が大きな声で三度も僕を呼びました。
早朝のわずかな時間を利用して読書に勤しんでいた僕はビックリして「ナッ、なにごとじゃ」と、前世、殿様であった僕は殿様口調で家内に言いました。
家内は「玄関前で犬が死んでいる」といつもより1オクターブ高い声で言いました。
家内が新聞受けに新聞を取りに行きましたら、体長1メートルほどの犬が玄関前で横たわっていると言うのです。
僕は一瞬これは自動車ひき逃げ事件だと思いました。
すぐ警察署に知らせるべきだと思いましたが、「いや、待てよ」。人間ではなく犬だから保健所に知らせるのが正しい処置方法ではないかと少し悩みました。
それにしても真夜中に自動車が通った音がしていないし、犬が自動車にぶつかって「痛いよ」という鳴き声も聞いていません。


もしかして、隣近所の嫌がらせかも知れません。
でも、夫婦二人の平素の行いから隣近所から嫌がらせを受けることは考えられません。
回覧板が回ってきたら内容を読まないですぐお隣に回付しているし、町内の清掃だって率先して草むしりをしているし、自治会の会費は所定の金額を遅延なく納めているし、集金担当の班長さんには「ご苦労様」と労いの言葉をかけているし、そんなことで自治会から優良会員で表彰されるのではないかと思っているくらいですから、嫌がらせを受けることはないはずです。


「オトウサンッたら、何を考えているのかわかりませんが、すぐ来てくださいよ」と家内から催促を受けました。普段より1オクターブ高い声にハッと我にかえり、「そうだ。現場を見ることが肝心だ」と思い、玄関から5歩先の現場に急行しました。
恐る、恐る犬に近づきました。道路上には血痕が見当たりません。それに傷跡も見当たりません。
「うーん、やはり隣近所の嫌がらせかも知れない。隣近所の誰かが私ども夫婦のどちらかに恨みを持ち、その嫌がらせとして犬の死体を玄関前に遺棄したのではないか」と推理しました。


首輪が装着してありどこかの飼い犬だったようです。やはり保健所に連絡して犬の亡骸を引きとってもらうことにしようと思ったのですが、今度は朝早くから保健所はやっているか心配になりました。


保健所の電話の番号は何番だったっけと思っているとき、犬のまぶたがピクッと動きました。生きていました。
生きている犬になんと呼びかけてよいものかと思案しましたが、とりあえず人間に呼びかける方法で「もし、もし」とやって見ました。そうしましたら犬はふらふらと立ち上がりました。それに震えています。


どこかで飼われていたこの犬は、ある日突然、飼い主から絶縁状をたたきつけられ、「そんなこと言われたって」と拒否をしたのですが、飼い主の権力には敵わず、それからあてもなくさまよい歩くようになりました。そのうちに空腹のため歩けなくなって、とうとう我が家の玄関前で倒れてしまったのではないかと、また推理しました。
すぐに水を飲ませ、牛乳を飲ませました。水と牛乳はすぐに飲み干しました。
震えは止まりました。なにか固形物を食べさせようと家に戻り、ご飯に味噌汁をかけ玄関に戻ったとき犬はいませんでした。近くを探したのですが見当たりませんでした。
また、放浪の旅にでていったようです。


その時から1週間経ちました。




[袖ケ浦公園の近況]
(「カルガモ」が飛来しました)



















(でかい態度で昼寝する「ネコ」)

















(道路横断中の「カマキリ」)