袖ケ浦公園「ガチョウ物語」

昔、むかし、と言っても15年ほど前ですけど、我が家から自動車で15分程度の場所にある袖ケ浦公園の上池に12羽のガチョウが住んでいました。
12羽のガチョウはいつも一緒で仲良しでした。時たま11羽になることがありました。
1羽の行動は常に謎で、仲間内から良からぬ噂が立ったこともありました。

 「ガチョウ友の会」を作ろうと提案があり、全員一致で賛成しました。
会長はみんなで選びました。
毎日、朝食のあと、朝礼が行われ、その日の予定が会長から発表されました。
朝礼のあと、隊列を作り、対岸まで泳ぎました。体力作りのためです。

 (ガチョウとその仲間たちで朝食・平成17年3月撮影)

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(朝礼・平成19年7月撮影)

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(隊列を作り出動・平成19年11月撮影)

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時々、ガチョウ友の会で打ち合わせが行われました。
議題は「ガチョウ友の会の規定」を作ろうかとか、「近隣住民と仲良くなるためには」とか、はたまた「年金制度を作ろう」とかいろいろと出ました。

議題の中で一番難しかったのは「アヒルをガチョウ友の会に入会させるかどうか」というものでした。上池には一大勢力のガチョウの他に二羽のアヒルがいました。
このアヒルからぜひガチョウ友の会に入会させて欲しいと会長に申し出があったのです。

ヒル側の言い分は、「アヒルもガチョウと同じ体格だから、友の会に入会しても違和感がなく友の会がにぎやかになる」という単純なものでした。
会長はすぐさま、友の会の打合せの議題に上げました。
会長はアヒルの入会は簡単に決まるものと思ったのですが、そうは簡単には決まりませんでした。

会員の中にプライドの高いガチョウがいて、そのガチョウが猛反対したのです。
「人間には同じように見え、その違いは全く分からないと思うが、我々ガチョウはアヒルより一回り大きくしっかりしている。ガチョウの肝臓のフォアグラは高級食材として食され、ガチョウから採れる羽毛「グースダウン」は、高級品としては布団に多く利用されている。
我々ガチョウはアヒルより何倍も人間の役にたっている。アヒルがガチョウ友の会に入会することによってアヒルがガチョウと同じだとみられるのは実に心外である。アヒルになにかたくらみがあるんじゃないかと思っている。従ってアヒルの入会は反対です」
打合せ会は紛糾し、朝方まで続きました。その後、どうなったかわかりません。

 ガチョウの声はいつも大きく、それにその声はドラム缶をひきづるような声だったので、公園の近くに住むオジイサンとオバアサンにとっては大迷惑でした。残り少ない人生の最大の楽しみである睡眠が、近頃特にひどくなってきた夜間頻尿とガチョウの声で睡眠不足が続いているのです。特に朝方まで続いた打ち合わせ会の日はひどく一睡もできませんでした。

そこでオジイサンとオバアサンは口をそろえて公園を管理する管理人のオジサンに「なんとかして~」と電話で訴えました。しかし、雑草対策に大わらわのオジサンから「直接ガチョウに言ってちょうだい」と言われ、直訴は却下されてしまいました。

オジイサンとオバアサンはガチョウに直訴するため、いつも寝不足でしたがさらに寝るのを惜しんで「ガチョウ語」を勉強しました。しかし、もう一歩というところで二人仲良く認知症になってしまい、その後どうなったかわかりません。

  毎年、春になるとガチョウは産卵しました。
ガチョウの若いころの産卵は、一羽で抱卵出来ないくらいたくさん産みました。そこで、三羽一組にした抱卵スケジュールをたて、4交代で全員が担当することにしました。途中抱卵に飽きてきたときは、太陽の熱を利用しました。もしかしたら、太陽の熱でも孵化するのではないかと考えたからです。

 (抱卵・平成19年5月撮影)

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(太陽の熱を利用・平成19年4月撮影)

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(三羽4交代で抱卵・平成19年5月撮影)

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巣には誰もいなくなる時もあり、この時を狙ってカラスがやってきて、重い卵をくわえ、飛び去って行きました。その時の顔は踏ん張ったため真っ赤であったと他の鳥が証言しました。真っ黒なカラスがどうして真っ赤な顔になったのか謎です。

 (カラスの餌になった卵の残り・平成19年5月撮影)

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 毎年、産卵の時期になると「ガチョウの誕生日はいつなんでしょうね??😊」ということが話題になりました。「卵を産んだ時(産卵時)」が誕生日だとか「いやいや、卵から赤ちゃんがでてきたとき(孵化時)でしょう」とか賑やかに話し合いが行われましたが、孵化しないことがわかりますと誕生日の話題は自然に消滅してしまいました。この時もオジイサンとオバアサンの耳には騒音として聞こえ、睡眠不足が相変わらず続きました。

  少子高齢化の対策がなされないまま、いつしか数年が経ちました。その間、一羽減り、二羽減り「ガチョウ友の会」は自然消滅し、あの賑やかだった餌場は元の賑やか時にもどることはありませんでした。

 (8羽・平成24年9月撮影)

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(6羽・平成25年9月撮影)

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(2羽・平成30年2月)

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(1羽となったガチョウ。仲間を探しているのでしょうか。時々、グエッ、グエッと鳴き声を発します。令和2年4月撮影)

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令和2年8月。
(そしてガチョウは、誰もいなくなりました)

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 (最後の1羽・令和2年8月1日最後の撮影となりました 。仲間と会えたかなぁ)

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 ガチョウもアヒルもいなくなった上池。にぎやかだった餌場にはガチョウと一緒に過ごしたマガモがガチョウを待っているように見えます。