病院の受付で

今日の天気 晴れ


雨の日が続いています。それに冬のような気候です。桜が咲き始めたというのに冬に逆戻りです。でも、明日からまた春の気候になるようで、今日一日家の中でジッとしています。



受付で
「おじいちゃん、おじいちゃん」と大きな声で自分の旦那様を呼んでいます。
「おじいちゃん。受付の人がね、自分の名前はなんていうのか聞いていますよ。なんていうんですか」


病院での採血の受付です。採血をする人が次から次へと入ってきます。
受付担当者は手際よく受付けをしています。受付担当者は採血者から診察券を受け取り、診察券に刻字された名前をみて診察券を出した人に「名前を教えてください」と言います。
診察券を出した人から教えてもらった名前と診察券に刻字された名前とが一致すれば採血者本人だと確認できます。受付は順調に流れていました。


80歳をとうに過ぎていると思われるご夫婦が受付にやって来ました。
奥様はご主人様に椅子に座って待っているように言いました。ご主人様は近くに座席がなかったので少し離れたところの椅子に座りました。
受付の順番が来ました。ここで受付事務が滞ってしまいました。
受付担当者「お名前を教えてください」
奥様「ハイ、○×△です」と自分の名前を言いました。
受付担当者「いいえ、診察券に書かれている人の名前です」
奥様「アッ、それはおじいちゃんの名前ですね。さっきまで一緒にいたんですが、あそこの椅子に座って待っています。今、おじいちゃんから名前を聞いて来ますから待っててください」といいました。
そして、大きな声で「おじいちゃん、おじいちゃん」とご主人様を呼びました。
ご主人様は聞こえたのか聞こえなかったのか分かりませんが座ったままです。
そこでさらに大きな声で「おじいちゃん。受付の人がね、自分の名前はなんていうのか聞いていますよ。なんていうんですか」
その声は、待合室にいる全員がびっくりするほど大きな声でした。それでもご主人様は座ったままでした。
受付担当者は困惑しこれ以上待てないと思ったのか診察券に刻字された名前を奥様に言いました。
「あれまぁ。おじいちゃんの名前どうしてわかったんですか」と奥様は言いました。


その後、受付は再び順調に流れて行きました。


受付をとっくに済ませ、採血の呼び出しを待っていた我ら夫婦は、最初から最後まで無言のままこのご夫婦のことをみていました。
我ら夫婦の心の中では「もしかしたら。いつかこうなるかも知れない」という思いがありました。
それにしてもどこの家庭でも女性は男性より強いなぁと思いました。



id:h-kawa0619:20091030 「久しぶりの笑顔」


















                     (鴨川海岸にて)