(退院)
11月13日の金曜日、退院の日です。
9日午後、第5回目の抗がん剤投与を受けるため4泊5日の日程で入院し、退院の日を迎えました。
退院当日の13日、真夜中の午前1時ころから「ウト・ウト」と「ウツラ・ウツラ」との状態が続き、寝付けないまま朝を迎えてしまいました。退院するうれしさと心配で寝付けなかったです。

退院する時のうれしさは、小学生低学年のころの「遠足」の前日の夜と同じでした。
遠足当日は、「キャラメル」と「おにぎり」。そして贅沢にも「ゆで玉子」。これだけでもうれしくて、うれしくて前夜は何度も目が覚めたものです。
なんで、60数年前の遠足を思い出させるような嬉しさを感じたかと言いすと、病院の狭い部屋の中で朝から8時間以上に亘って抗がん剤・生理食塩液の点滴を受け、ある時は12時間以上もかかり深夜に及んだこともありました。点滴が終わると吐き気がして、三度、三度の食事も満足に喉を通らない状態が続いていたのです。それから解放されるかと思うと、つい、うれしさのあまり蒲団をかみしめ涙を流し、過ぎ去った遠い昔の遠足のことを思いだしたのです

さて、この「ウト・ウト」と「ウツラ・ウツラ」と、同じような言葉ですが使い方に少し違いがあります。どちらも半分ねむったような、覚めたような状態ですが「ウト・ウト」は眠りの方に重点が置かれ、浅く、短かくても心地よい状態をいいます。夢心地はウト・ウトの状態です。
「ウツラ・ウツラ」は逆に目覚めているほうに重点がおかれ、良くねむれない様子を表わすそうです。心配ごとがある場合はウツラ・ウツラです。少し勉強になりましたか。


(今回の入院)
最初に入院したのは6月17日、2泊の検査入院。6月29日から8月9日までの42泊、長期入院でこの間、抗がん剤投与2回と放射線治療。そして9月、10月それぞれ4泊、その間抗がん剤投与、今回の11月9日も4泊、抗がん剤投与で、約5カ月間に5回の入院、入院述日数56泊、抗がん剤投与5回となりました。
お陰さまで治療の甲斐があって、肺がん腫瘍がどんどん小さくなってPET-CTでは腫瘍の影は完全に消滅していました。
しかし、数値では健常者より0.3大きいということが分かり、今回、この数値を正常者の数値に限りなく近づけようと入院し、第5回目の抗がん剤投与を受けました。


(点滴)
11月9日(月)の午後2時に入院しました。
入院した当日から点滴が始まり、所要時間約7時間。主に「生理食塩液」です。
で、実はここから素人医学の講義が始まります。これからある程度、想像で書きます。と、言いましても時々、部屋を巡回に来る医師、看護師さんなどのお話を参考にしています。専門家の医師がこれをみたら「とんでもないことだ」とお叱りを受けるかもしれません。
さて、腎臓。この腎臓の働きは、血液の中から体に必要のない物質をこし出すことです。
大変、重要な臓器です。
そして、腎臓の働きが悪くなると、老廃物や余分な水分を体の外へ排出出来なくなり、食欲不振や体調不良の原因にもなります。
入院第一日目に行った「生理食塩液」の点滴は、この腎臓の働きを活発にするために行ったのではないかと思います。
2日目に抗がん剤、制吐剤などたくさんの薬を輸注しますので、腎臓に抗がん剤が残って、腎臓の細胞を破壊してしまうことが考えられます。
そうならないように、どんどん尿として体の外に排出させるため腎臓の働きを活発化させているようです。それと併せて「排尿量」を記録することになりました。
点滴二日目。(11月10日(火)) 抗がん剤2種類と制吐剤。排尿促進剤など投与。あわせて「生理食塩液」。所要時間13時間。
点滴三日目。(11月11日(水)) 「生理食塩液」投与。所要時間7時間。
点滴四日目。(11月12日(木)) 「生理食塩液」投与。所要時間7時間。
三日目、四日目は生理食塩液です。やはり腎臓の働きを促進させています。
これらの順序は第一回目から全く同じです。



(輸液ポンプ)
点滴に用いられるのが「輸液ポンプ」です。
これって「性急な日本人」にピッタリな器械です。この器械は、輸液チューブを使用して、このチューブを器械に挟み込み、輸液をローラーで押すことによって、予め設定された量を輸注することができます。輸注速度、輸注予定量を設定することができます。
例えば、1000ミリリットルの「生理食塩液」を輸液ポンプを使用して1時間で200ミリリットル輸注した場合、全部輸注するまで5時間かかるという計算ができます。これによって終了する時刻がわかります。
もちろん、基本的には体に無理がかからないように血流に合わせて規則正しく輸注をすることだと思います。
薬の種類によって、2種類同時に輸注をします。その時は「輸液ポンプ」は2台使用します。
途中、管が閉塞する場合があります。その時は、輸液ポンプは「ピー、ピー」と音を発します。ボタン式レシーバーでナースセンターあて連絡をします。看護師さんはレシーバーを通じて流れてくる音を察知して「只今、伺います」と返事が返ってきます。
点滴完了の場合も、「ピー、ピー」と輸液ポンプが教えてくれます。


(吐き気)
吐き気は第一回目の抗がん剤投与を受けた7月初めから続いています。
抗がん剤を投与する間隔を長くしたり、短くしたりして調整をしているのですが、抗がん剤投与を受けた時から吐き気はひどくなります。
ごはんの匂い。オカズの匂い。味噌汁の匂い。トイレの匂い。シャワー室の匂い。石鹸の匂い。廊下の匂い。待合室の匂い。体臭。全てに吐き気を感じ食欲はありません。
朝の食事 ごはん・豆腐・キンピラごぼう・のり佃煮・味噌汁・漬物・牛乳
昼の食事  かつ丼・お浸し・清汁
夜の食事 ごはん・サンマ焼・田楽・フルーツ・漬物
どうです。病院の食事にしては少し贅沢な感じがするでしょう。これで、一食自己負担260円。1ヶ月でも23千円の食費。毎月、23千円で生きていかれるのですから、年金生活者にとって大変魅力的。でも、食べられないのです。ごはんなんて一口も口をつけることが出来ないのです。オカズはどれも見ただけで吐き気がします。
それでは何をたべたのかと言いますと、近くにコンビニがありますのでそこからヨーグルト・ゼリーなどを買ってきて食べました。これらはすぐ消化してしまいますので夜中に空腹で胃が痛くなり、朝まで起きていたこともあります。
退院後、しばらく日数が経ちますと食欲が出てきますので、今しばらく我慢です。それでも吐き気は完全になくなることはありません。




「オトウサン、オトウサン、オトウサンの眉毛なくなっちゃった」と家内が寂しそうに言いました。抗がん剤の副作用による脱毛です。
僕は自分の顔をみるのは一日に一回、洗顔時に鏡にうつった「にがみきった良い男」の顔をみて満足するだけなので気がつきませんでしたが、家内は四六時中、いやでも僕の顔を見ることになりますので、そこで眉毛がなくなっていることに気がついたのです。
そこで、今風の「イモトアヤコ眉」のように太く眉を書いてみたらどうかとかいろいろ研究をしてみました。
でも、一度で良いからお公家さんのような「天井眉」を書いて、そして「麻呂は、今日も元気じゃわい」と言ってみたいのです。


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