読書

ヒナゲシ

今日の天気 曇時々雨


今日もすっきりしない天気です。公園を歩いてきましたが、途中で雨が降り濡れてしまいましたが、暖かな風が吹いていましたのでそのまま歩き通しました。


電車内は空いていました。4人掛けのボックス席が空いていましたので、そこに座りました。前の席は空いています。
と、そこに元税務署員か元教師か、はたまた元銀行員なのか分りませんが、身なりのきちんとした老夫婦が座りました。二人ともこの世では何も面白いことはなく、絶対笑わないといったような顔立ちをしていました。ご主人のオツムの前頭部が剥げています。側頭部と後頭部には若干の毛髪が見受けられました。
電車が動き出し、しばらくするとこの夫婦は仲良く瞑想に入りました。(と、思われます)


僕はヤバイなぁと思いました。これから読む本は、絶対人のいないところで読まなければならない本だからです。そんじゃ、家で読めばと言いたいのでしょうが、家では落ち着いて読書が出来ないのです。電車通勤していたときから、車内は図書館だと固く心に決めていたこともあり、車内で読書するのが癖になってしまったのです。それに車内の退屈な時間を過ごすには読書が一番です。寝るのが一番とおっしゃりたい方もいるでしょうが、寝過ごす可能性もあり、僕の場合、寝るのは二番目にランクされています。


堅物と思われる夫婦の前で読書するには、緊張感を持って読まなければなりません。
絶対に声を漏らしてはなりません。それに絶対にニヤけてもいけません。平常心で読まなければいけません。
これから読む本は、人のいないところで読むことが必要だと書きましたが、実は本の内容がおかしくて、おかしくて大きな声をだして笑い涙をこぼしながら読まなければならないからです。
読み始めた途端、笑いがこみ上げてきました。でも、絶対声を出してはいけません。
笑い声を噛み殺しますと、内臓周辺が脂肪で満杯である腹部が、コンニャクが棚からおちたようにプルルンと何度も振動しました。
読み進んでいくうちに「おでーかん様(お代官様)、二度と悪いことはせんのでどうかお見逃し下さい」と叫びたくなる箇所になりました。


そのタイトルは「ハゲについて」。
(転載抜粋)
「頭がハゲた」から始まりました。又、腹部がコンニャクのようにプルルンと震えました。
(中間 省略)  
「頭がハゲた。しかし依然として、(作者の)側頭部と後頭部は剛毛に被われている。[薄毛だけど前に座っているオジサンと同じジャン、と思いました]理不尽である。この不平等は憲法の精神に悖る。
江戸時代に生まれていれば、まだ何の苦労もなかった。サカヤキを剃る手間が省けて、むしろ都合が良かったはずだ。
ふと考えるに、もしかしたらチョンマゲとは、いずれはハゲる大多数の男たちのために用意された社会習慣ではなかったか」
以下省略
(勇気凛々ルリの色・浅田次郎著・講談社)


僕は前に座っているオジサンのサムライ姿を想像しました。そうしましたら、笑い声が出そうになりましたので、お腹に力を入れコンニャクのようにプルルンと振動させました。僕のお腹は何度もプルルンと震えましたので痛くなってきました。もうお腹だけで笑うには限界です。それに真っ正直に生きている僕の顔には笑いを隠すことはできなかったようです。
ニヤ、ニヤしているその時です。前のオジサンが目をあけたのです。


あとはご想像におまかせいたします。