吾輩は寝子である。やることがないから終日寝ている。名前はない。みんなは「ノラ」と呼んでいるが気にいっている。公園にいる寝子の名前は全部「ノラ」だ。誰も気にしていない。人間に飼われていたころは名前があったが、個人情報のため公表は差し控えたい。本来ならば「吾輩は猫である」と書くところだが、あえて「吾輩は寝子である」と書いた。なぜ「寝子」と書いたか。そのわけはネコは一日の大半を寝て暮らしているので「寝る子」であり、縮めて「寝子」としたのである。吾輩に限らず、公園にいるのはすべて「猫」ではなく「寝子」である。日中は暖かい日差しの下でのんびりと寝ているが、夜は寒くて寝ていられない。早く暖かい春が来ないかなぁと待っているところだ。


さて、吾輩。住所は不定で毎日塒は変わっている。住所を聞かれたら「公園内」としている。それで結構通じて不便に感じたことはない。吾輩は公園に来る前は、由緒ある家庭に育ち、飼い主にじゃれついたり、ソファで昼寝をしたり、猫なで声で餌を求めたり、ゴロゴロと喉を鳴らし飼い主のお布団の中にもぐりこみ顔を見合わせて寝たものだ。ある日、飼い主が散歩に行こうと吾輩を誘ってくれ、連れてこられたのがこの公園。しばらく歩いているうちに飼い主と離ればなれになってしまった。今思うとどうも勘当されたらしい。勘当の理由に思い当たる節はない。その当時は寝子としての品格も備えていたものだが、いつの間にかふしだらな生活を送るようになった。


公園にいる寝子たちは吾輩と同じで何かと事情があるようだが詳しいことは知らない。吾輩は事情のある寝子が増え続けると公園の環境はますます悪くなっていくことを心配している。餌の奪い合い。無計画な繁殖。いじめ。喧嘩。フンのまき散らし。人間への媚。そこで吾輩は考えた。公園にいる寝子たちの元飼い主を捜し、引き取ってもらうことだ。元飼い主との間にはしっくりいかない何かの事情があったことは推察できるけど、この際、じっくりと話し合って確執を取り除き、元の仲の良かったファミリーに戻ってもらうことだ。


吾輩は知り合いの人間に公園にいる寝子の写真を撮ってもらい、それを公表することにした。もちろん、吾輩も写っているが内緒だ。まだ、他にもたくさんいるが次の機会にする。写真を見て「アッ。このネコ、見覚えがある」とか「〇〇ちゃん(ネコの実名)こんなところにいたのか」なんて思った人はぜひ名乗り出て欲しい。吾輩はその寝子を探し、話し合いの場を設けたいと思っている。


肝心な吾輩はどこにいるかって。吾輩は住所不定なので、いつも同じ場所にはいない。したがって連絡したい場合は、近くにいる寝子に話かけてくれれば、その寝子が吾輩に連絡してくれることになっている。吾輩は今流行のスマホを常に携帯しているので、GPS機能で居場所がすぐわかるようになっている。一日も早く公園にいる寝子たちが幸せになるように皆様のご協力をお願いしたい。


[この顔に見覚えありませんか]