「カルガモ物語」(第二回目)

こんな日は一番幸せ

今日天気 晴れ。


今日は又暑くなりました。極端ですね。寒かったり、暑くなったりで。
明日は又、寒くなるようです。
カルガモ物語」第二回目をお送りします。


[第二回目]
それから人間にとって迷惑な鳥がまだいます。
鳥の名前がわからないのですが、頭が黒い鳥でこれも渡り鳥です。
菜の花の若芽を次から次へと食べていくのです。菜の花畑は畑だけになってしまいました。
菜の花が芽を出してきた時、人間は菜の花畑周辺を網で囲いました。この頭の黒い鳥たちに食べられないようにした積もりでしょうね。それでも食べられてしまいました。
どうしてでしょうか。答えは簡単。鳥は飛ぶということを人間は忘れていたようで、畑の上を網で覆っていなかったからです。人間ってあまり利口でないことを知りました。
この鳥は12羽で行動しています。この鳥の名前は人間も分らないと見えて「ナノハナワルサーズ」という名前をつけたようです。
僕には関係ない話ですが、その成り行きを見ていました。


人間という言葉が何度か出てきました。
人間という言葉に対して僕は余り良い印象を持っていません。この公園に来るまで人間というものを見たことがありませんでした。
最初に人間という言葉を聞いたのは確か母親からだったような気がします。
「人間に気をつけるのよ」と言われたのですが、人間ってどんなものであるか理解できませんでした。
僕が小さい頃の話ですが、
「昔、むかしあるところに」と母親から昔話を聞かされました。
その昔話の続きはこうです。
「昔、むかし、あるところにカルガモの若夫婦が池の傍に住んでいました。カルガモの夫は田んぼに餌とりに、カルガモの妻は池に洗濯に出かけました。夫婦の仲は大変睦まじく、他の鳥たちも顔を赤らめるほどでした。カルガモ夫婦の鳴き声は、それは、それは綺麗な声で「ピロロ」と鳴きました。
ウグイスの声を聞いたことがあるでしょう。それ以上の綺麗な声でした。
ある日、餌とりを早く終った夫は池に行って妻が洗濯するのを見ていました。妻が洗濯を終えましたので、夫が「こんな良い天気は久しぶりだね。洗濯物は早く乾くだろうから、ちょっと岸辺で寝て行こうよ」と、今では想像が出来ないくらいの、それは、それは綺麗な声で「ピロロ」と妻にささやきました。これが最後の綺麗な鳴き声になるとはカルガモ夫婦にとって思ってもみなかったことです。
悲劇はこのあと13分後に起きたのです。
気持よくウトウトしていた時にカルガモ夫婦の傍を人間が通りました。
そしてウトウトしていたカルガモの夫婦に向かって「ワッ」と言って驚かしたのです。
人間は面白半分に言ったのでしょうが、驚かされたカルガモ夫婦はたまったものではありませんでした。
びっくりしてその場で夫婦とも26センチメートルほど飛びあがりました。
と、同時に夫婦とも驚いた時の声を「ビエッ」と出してよいものか、「クッ」と出してよいか迷いました。そして出た声がその両方を交えた「グエッ」という鳴き声でした。それからずっとカルガモの鳴き声は「グエッ、グエッ」となりました」。
母親の長いそして何を言いたかったのか分らない昔話が終わりました。僕はその昔話を聞いた時、人間に対して憤りを感じました。
あの時、人間が驚かさなければウグイスと鳴き比べが出来たのにと思いました。


人間という実物を見たのはこの公園に来てからです。
生まれたときは、うっそうとした森の中の湖の近くでした。キツネとか鹿などの動物たちは良く見かけました。キツネには特に注意をしていました。兄弟のうち2羽はキツネに襲われました。残った兄弟は10羽です。小さい頃は母親の後ろについて兄弟そろって泳いだものです。母親を先頭にして行列を作って泳ぐのはカルガモだけかも知れません。
父親はその頃はすでにいませんでした。
兄弟が大きくなると、母親もいなくなりました。兄弟仲良く暮らしていたのですが、冬の寒い季節が来て一羽、一羽それぞれ南のほうに旅立っていきました。


この池に下りる時に上空を二三度旋回しました。キツネがいないか調べたのです。
キツネはいませんでした。その時、池の周辺を歩いている動物を二つ見つけました。
今、下で歩いているのが人間だと仲間から聞きました。
池に下りて、歩いている人間をじ〜っと観察しました。


初めて見た時笑っちゃいました。
(カルガモの笑った顔って見たことがありますか。一生に一度あるかないかで、大変珍しいことと言われています)。
何故って、人間に羽毛がなかったからです。それに
つんつるの丸い形をした顔の真ん中に突起物があって、口は薄い皮で覆われ、その口先は平らで、目の上に毛らしいものが生えています。頭は毛で覆われてその毛は白いものや黒いものが混じっています。耳は大きく、腕が二本垂れ下がっています。後で知ったのですが、頭に毛がない人間もいるらしいのです。
(続く)