暖かな日


今日は風もなく暖かです。
公園を歩くと汗が出てきます。公園で有名な猫が日向ぼっこをしていました。暖かなところでノ〜ンビリ。相変わらず無愛想です。そんな姿を見て声をかけようかどうしようかと思い悩みましたが、新年初めて会いますので素通りするわけにもいかず、一言挨拶をしておきました。


「新年明けましておめでとうございます」


「人間の世界ではお正月ということで「おめでとう」と言う挨拶をしているようですが、猫の社会ではお正月なんて習わしがないから挨拶は省略します」


「相変わらずですね。それにしても鼻を引っ掛けないようなご挨拶には恐れ入ります」


「恐れ入ったか。ま、人間界でお正月を迎える時期はあたしたちにとっては一年の中で一番堪える時期なんです。1月は寒いですからね。昔、人間に飼われていたとき、コタツの上でヌクヌクと丸くなっていたときが懐かしいです」


「あぁ、人間に捨てられてから人間に反感を持つようになったのですね。それで僻んでいるんですか。それにしても1月は寒いといいますけど、毛皮を着ているのですから寒さ知らずじゃないですか。僕なんか毛皮を着ている人を見ると、金持ちが歩いていると思いますが」


「毛皮はあたしたちの着るものです。生まれて死ぬまで一張羅。それに寒いからと言って毛皮をもう一枚といって重ね着ができないんです」


「意外と毛皮って不便なものですね。ところで話が極端に変わりますが、納豆好きですか」


「あのネバネバした食べ物ですか。あんな臭いもの猫は食べませんよ。あんなのどこが旨いんですかね。それがどうかしたのですか」


「ついでに人間界のことを少しお話させていただきますが、つまらないと思いましたらすぐいなくなって結構です」


「人間界の話はいつ聞いても欠伸がでますが、いつもお世話になっていますからホンの少しお付き合いしますよ」


「実は今朝の新聞を見てびっくりしました。僕が主食としている納豆が品薄で、殆どのスーパーから納豆が消えてしまいました。何故かって。あるテレビ局で納豆はダイエットに良いと放映したものですから、長生きしたい人間がワッとスーパーに買いに行ったのです。先日も寒天が健康に良いとテレビで放映されましたら、その日のうちに寒天がすっかり売れきれて、次の発売日には行列ができたということがありました。今度は納豆です。納豆が僕の主食です。副食ではないんです。ですから、毎日、朝、昼、晩と食べているので、これがなくなったら生きていけないのです。今までずっと納豆を食べているのですが、少しも体重が減りません。むしろ増えているのです。テレビで放映されたことが本当に正しいのかどうか疑問です」


「それはお気の毒ですね。でも、人間は我慢が足りないですね。寒いといえば厚着をするし、太っているといわれれば納豆食べて痩せようとする、こんなことは猫の世界では理解できませんね。私たちの世界では、寒くなっても一張羅の毛皮で我慢をし、太りたくても食べ物がないので我慢をしているのです。人間だって痩せたいと思うなら、食べたいものも我慢して食べなきゃいいんですよ。人間長生きしちゃ若い人から憎まれるばかりです。年金保険料の負担が増すばかりだと。でもそのうち1週間も経てば納豆ブームは過ぎ去りますよ。熱しやすく覚めやすいのが人間ですから。それまでジッと我慢することですね。そのほうがダイエットによいですよ」


「猫君、ありがとう。ベンキョウになりました。猫君も痩せすぎて死なないように。僕も太りすぎないように頑張ります。それではご機嫌よう」