昨日の「運動会」の続きです。

土曜日に行われた小学校の運動会。この小学校の近くに古くなった一戸建ての建物があります。そんなに広くはありません。この家は小学一年生の子から見れば、おじいちゃんが買ったものです。土地と建物の資金は銀行から借りました。おばあちゃんも働きました。一年でも早く返済できるよう二人は力を合わせ一生懸命働きました。
結婚してから二人はしばらくアパートに住んでいました。毎月の家賃が勿体無く思うようになり、おじいちゃんは一大決心して一戸建てを買うことにしたのです。庭もそんなに広くはありません。でも、おじいちゃんとおばあちゃんは満足でした。


その家の玄関には、おじいちゃんとおばあちゃんの靴がいつもきちんと並べて置いてありました。おじいちゃんの靴はいつも磨かれて光っていました。
5年経ちました。おじいちゃんとおばあちゃんの横に男の子の靴がありました。
ウルトラマンのついた靴です。やっと授かった男の子です。おじいちゃんとおばあちゃんは大変喜びました。そして大事に大事に育てました。その子は小学、中学、高校、大学と順調に進んでいきました。そして、男の子は素直な子に育ちました。会社に就職することも出来ました。


その間22年が経ちました。玄関に置いてあった靴は三足から二足、二足から一足になっていました。最初になくなったのはおじいちゃんの靴でした。それからしばらくしておばあちゃんの靴がなくなりました。銀行からの借り入れはまだ残っていました。
男の子は少ない給料から毎月返済しました。


それから7年経過しました。玄関に置いてある一足の靴の底はかなり減っていました。それに埃まみれです。一人暮らしの玄関は広すぎました。でも、それからしばらくして、女性の靴がその横に並びました。二足ともピカピカに光っています。
一年後にはウルトラマンのついた可愛い靴が両親の靴の横に置いてありました。この子も大事に育てられました。この子のお母さんは我がままを許しませんでした。厳しく躾ました。こんなこともあって時々子供と喧嘩することもありましたが、この子はいつも素直に謝りました。


この子が小学一年生に入学した時、お父さんから運動靴を買ってもらいました。玄関に置いてある自分の靴のほかにこの運動靴を並べておきました。下駄箱にはまだ靴が入る余裕があったのですが、この子のお気に入りの靴だから並らべておきました。4足並んでいます。
運動会のある日、この子は5時半に目が覚めました。今までなかったことです。いつもはお母さんかお父さんに起こされています。お母さんもいつもより早く起きてお弁当の準備です。6時に花火がなりました。「今日は運動会をやるんだ」と思いました。
お父さんから買って貰った運動靴で思い切り走れるのがうれしいのです。それにお父さんとお母さんが僕を見にきてくれる、うれしくてうれしくてどうしようもありません。


友達が迎えに来ました。クラスで人気のある「しょうご君」です。運動靴の紐をきちんと結び、二人は仲良く学校に向かいました。