入院生活が長くなるといろいろなことを経験することになります。
入院初日は、採血が行われます。
採血によって白血球の数だとか、腎臓の働きだとかその他いろいろなことを知るんだそうで、毎回、採血の目的が同じだとは限らないようです。
採血方法も非常に簡単になりました。一昔前は、注射で血液を抜いて採血管に分けていたような気がしますが、今は真空になっている採血管を差し込むだけで済みます。
針を刺すのは昔と変わりありませんし、針を刺すときの痛みもあまり変わっていないようです。


若い男の看護士さんが採血にやって来ました。
看護士さんは「それでは採血をします。今までどちらの腕から採血をしていましたか」と言いました。
僕は「右腕からです」と言いました。
看護士さんは「それでは今回は左腕でやってみましょう。アルコールアレルギーはありませんね」。
そう言って看護士さんはゴムで腕を締め上げ、エタノール綿で穿刺部分の消毒を始めました。
看護士さんは「手を軽く握ってください」と言いながら、穿刺部分をとんとんとたたき始めました。どうも血管が盛り上がって来ないようです。
「それでは最初チクッと痛いですよ。我慢してくださいね」と看護士さんが言いました。
針を刺すところがきまったようです。で、チクッと痛いのを覚悟していたのですが、今回は何故か「ジグッ」と今までにない痛みを感じました。
看護士さんが僕の耳元で独り言を言いました。
「やっぱりだめだったか。血管が固かったからなぁ。おお、ふくらんだ来た。今まで通り右腕からやればよかったかなぁ」とぶつぶつ言っているのです。
無理して何かをやったことが痛みの原因だろうと推測はできます。
原因を追求する前に採血を何とか取りやめるように泣いて看護士さんに懇願しようと思った矢先、看護士さんは「左腕での採血には無理があるようですので、「右腕」から採血します」と何事もなかったかのようにして言いました。僕は心の中で「痛くて、痛くて死ぬかと思った」と叫んでいました。


右腕で最初からやり直しました。
今度は「チクッ」と今まで通りの刺激でした。うまく行ったようです。
でもしばらく経ちましたら、また独り言が始まりました。
「あれっ。こぼれちまった。どうしたんだろうなぁ」。
「な、何がこぼれたのさ。さっきは痛みで死ぬかと思ったらさ、今度はなにで死ぬ思いをするのさ」(びっくりしたので生まれ育ったところの方言がでてしまいました)
と僕は心の中で悲鳴を上げました。
「ああ、よかった。元に戻って」とまた看護士さんの独り言です。


「ねえ。看護士さん。お願いだから患者の耳元で独り言をいうのをやめてくれないかなぁ。耳元で不安になる言葉を言われたら心配で心配で夜も眠れなくなってしまう。
独り言って言っている本人が気がついていないから始末におえないんだけど、早く気がついて欲しいなぁ」。


採血はいろいろとありましたが何とか済みました。























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