アヒル

野生のマガモを飼いならして家禽化する際、体が大きく重くなり、翼は小さくなって数メートルほどしか飛ぶことが出来なくなった。また、体形も太ったもの、直立して歩くものなど色々変化した。日本でよく飼われているのに白色で嘴と水かきの黄色いシロアヒル、アヒルマガモの交配したものが合鴨である。合鴨は飛ぶことができる。



「どうしてこんなことになったんだろう」とアヒルは思いました。
数日前では、アヒルマガモは大の仲良しでした。池を泳ぐときも、食事をするときも、いつも一緒でした。マガモは4羽、アヒルは1羽です。
体の大きなガチョウたちが悪さをしかけてきたときも、一緒になって対抗しました。
それがなぜかマガモたちはアヒルを遠ざけるようになりました。


(アヒルマガモ仲良く食事していた時)


















(寂しそうなアヒル)


















(マガモ)


















ヒルマガモを尊敬していました。
小さい頃、母親から「マガモはアヒルのご先祖様ですよ。仲良くしなくちゃいけません。それにマガモに限らずお年寄りを敬い、親切にするんですよ」と聞かされていました。
そして、人間の世界のこともお話をしてくれました。
『人間のお母さんたちは子供たちに「電車ではお年寄りに席を譲りなさい」ということを教えています。
その理由は「お年寄りは若い人と比べて体が弱いからですよ」と子供たちに言っています』。
ヒルの母親は言いました。
「お年寄への思いやりは大事なことですよ。でも、お年寄りを敬う心が欠けています。今こうして幸せな生活を過ごせるのは、お年寄りの皆さんが私たちの生活を築いてくれたお陰なのです。
席を譲るのはお年寄りを敬い、感謝していることのお礼なのです。
人間の世界はお年寄りを敬う心がなくなっています。せめてアヒルの世界ではお年寄りを敬う心を無くしてはいけません」。
そんなことでアヒルより永く住んでいるマガモに感謝し尊敬していました。


ヒルは母親が言ったことを思い出していました。
思い当たることがありました。
先日、公園を管理するオジサンが餌を持った来たときです。
何日も食事をしていなかったのでお腹はペコぺコでした。
食事をするときはいつも一緒でしたが、その日に限ってマガモたちより先に餌場に向かって泳いで行きました。その時マガモに向って「お年寄りのマガモさんは泳ぎが遅いから、先に行きますね」と言ったのです。
その時以来、アヒルを遠ざけるようになったのです。
ヒルは思いました。
「泳ぎが遅い」と言う言葉がまずかったのに気がつきました。
でも、今更「マガモさんは泳ぎが速い」と言いなおしても、「泳ぎが遅い」と言った事実は消えることはありません。言葉は言いなおしがきかないことを知りました。
そして、なるべく早くマガモさんたちに心からお詫びをして、また、仲良くしてもらおうと思いました。


いつもマガモと一緒にいるアヒルがなぜかマガモと離れたところにいました。
一日経ち、二日経ってもアヒルは孤立しているように見うけました。
ヒルマガモの世界がどうなっているか知る由もありません。
ヒルが一日も早く、いつものと同じようにマガモたちと一緒に泳ぐ姿を見たいものです。