「納豆」事件  id:h-kawa0619:20070113 (納豆のお話)

先日「納豆のお話」を書きました。納豆は小さい頃から食べていて、副食であったものがいつの間にか主食に変わり、毎日食べているのにもかかわらず、痩せないと書きました。
ある日から主食にしていたあるメーカーの納豆がスーパーの棚から消えてしまいました。死ぬか生きるかの大問題です。どうしたんだろうと思っていた矢先、テレビで納豆が「減量」に良いと放映されたとのことで、納豆が売れに売れて品薄になったようです。
そして、主食にしていた納豆以外の納豆の値段は通常価格より倍以上に跳ね上がってしまいました。スーパー側の便乗値上げです。
今まで納豆を食べて痩せなかったと書きましたが、それは食べ方に問題があると知人から聞きましたので、痩せたい一新で値上げした納豆を買い、食べ方にも細心の注意を払い、納豆を50回、コネコネとかき混ぜ、食べたいのを我慢して20分も納豆とにらめっこをしていました。20分経過したところで高い値段の納豆を一粒、一粒かみ締めて食べるようにしたのです。
この時から米飯を主食にして納豆は副食に変更しました。これでもしかしたら痩せられるかも知れないと思いました。


新聞に「納豆で減量。実験捏造」と一面に掲載されたのを見たとき、30cmほど飛び上がって驚きました。
気持ちを冷静にして新聞をスミからスミまで読みました。すべてがデタラメ。思わず「社長を出せ」と心の中で叫びました。
知人から言われて、もしかしたら痩せるのではないかと思い、「納豆を50回もコネコネとかき混ぜ、20分も食べたいのを我慢していた」自分が情けなくなってしまいました。知人も面目丸つぶれです。知人も「50回コネ、コネ。そして涎を流して20分も待っていた」姿を想像してこれまた情けなくなってしまいました。そして、高くなった納豆を買って必死に痩せようとした僕はどうすればよいのでしょうか。


この納豆のダイエット効果を示すデータが捏造されたことに消費者は怒るのは当たり前のことです。放映された番組を信じ、それを実行するのは当然のことです。捏造なんて誰が考えますか。このようなことが起きれば、これから何を信じてよいか。テレビ番組の信用は失墜してしまいました。
それにこのような事件が起きると必ずと言ってよいほど有識者のコメントが掲載されます。
今回のコメントの中に「これさえ食べれば痩せる、というような話は、納豆に限らずあり得ない」と出ていました。
結果が分かってからでは遅すぎます。何故、納豆の品薄状態になったときにこのようなコメントが出されなかったのか。疑問が残ります。


「ナト、ナットウ」。
炭鉱の町で向かい側の山のほうから大きな声が響きわたってきます。今日も小さな兄弟二人が納豆を売ってくる声です。毎朝のことです。昔はどの家も貧乏でした。少しでも親を助けたいと納豆売りを始めた兄弟です。竹かごにたくさん納豆をいれて売って歩きます。
ガラガラと玄関があきます。「おばさん、納豆を買ってくれませんか」。
母親は納豆を買います。「今朝は間に合っているよ」というときもあります。そんなとき、兄弟はがっかりして帰ります。
納豆は朝のオカズになります。7人家族の我が家にとってはなによりのオカズです。納豆に醤油をかけ、暖かいご飯にかけて食べるのが何よりの楽しみでした。この兄弟にとって我が家はお得意様でした。
「ナト、ナットウ」、兄弟の声は遠ざかっていきました。この声は、時にはうれしそうに、そして時には悲しそうな声でした。


そのときから半世紀以上が経ちました。この兄弟、今、元気でいるだろうか。今回の「納豆騒動」を新聞で読んだだろうか。
読んで、自分たちが小さい頃、兄弟で納豆売りをして歩いていたときのことを思い出しているだろうか。
僕はお陰さまで、あなたたちの売りにきた納豆で元気よく過ごしています。小さい頃、毎朝、家族で食べた納豆が好きになり、今でも納豆を食べています。痩せはしないけど、健康な体です。
納豆をありがとう。


太陽が雲の間から顔を出しました。これから晴れそうです。